なにメモ

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コロナワクチンへの、とある資料に対する見解をまとめた

ふと、とある人から紹介されたコロナワクチンに関する資料があまりに雑すぎて不快になったので、査読者になった気分で一つ一つ主張に対して問いていきたいと思い、筆をとった次第です。

 

こちらがまずその資料になります。まず、資料を読んでからのほうが私の意見がわかりやすいと思います。

https://cdn.goope.jp/179637/210809081456-6110657075992.pdf

 

一言だけ前書きすると、ワクチンを打つかどうかは個人の意志によります。この点は資料作成者と同じ意見です。私はあくまでこの資料に対して問うだけです。

 

  

「打たなくても、もともと 0.8%の人しか発症しない」という主張は成り立ちません。

なぜならば実験環境と現状とでは環境が違うからです。反例として、被験者がいた国の一つであるブラジル[1]の感染者数は8/24時点で約2057万人であり[2]、国民数の約2億947万人[3]です。これを単純に計算すると10%程度の人が発症することになります。

このように被験者たちが置かれている環境を無視している問題があります。厚労省が発表しているデータによると"約4万人の被験者を対象に、2回目の接種後7日以降の発症の有無が比較されました"[1]としか書かれていません。つまり、ワクチンを打った人とプラセボを打った人それら全員が発症するほどのウイルスに晒されていたか不明です。ここから、たとえば、この分母を被験者の数でやってしまうと、この「0.8%」は市中の発症者の数で変わってしまいます。したがって、「打たなくても、もともと 0.8%の人しか発症しない」はこの実験においてのみしか意味を持ちません。この割合を一般化して現状の日本に適用できません。この誤謬を「Faulty generalization」(早まった一般化)と言います。

 

「そうなの?でも、 インフルワクチンと同じでちょっとは予防出来てるじゃん!」からの「どこが同じなの?」「使用した事のない添加剤が入ってるのに?」は明らかに論点のすり替えという誤謬があります。

女性は予防効果に関して述べているのに対して、男性は添加物があることを問題に話を展開していきます。予防効果が同じであることを論点として女性は主張しているのに、構成物質が異なることを男性は主張するという全く無関係な話をしています。「Irrelevant conclusion」(論点のすり替え)という誤謬の一種です。

 

「子宮頸がんワクチンみたいに、5年後わかんないよ?」とありますが、5年後の今でも子宮頸がんワクチンは安全とWHOは言っています。

子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の5年後とは現在のことを言っているのでしょう。WHOは"Clinical trials and post-marketing surveillance have shown that HPV vaccines are safe and effective in preventing infections with HPV infections."[4]と現在言っています。この点からしても誤解を生む表現と言えます。そもそもHPVワクチンの安全性とファイザー製のワクチンの安全性を比べることに意味があるのか謎です。これもまた早まった一般化と言えましょう。

 

「ワクチン打った方が発症した場合6.37倍重症化するよ?」とありますが、そもそもその重症化する率も実験しなおしたら1倍以下になることも十分あり得ます。

この変動があるために95%信頼区間という考え方があります。症例数を確率的に考えるのです。

 

「50代未満のコロナ 重症化は33人でさぁ」、「50代未満の健康な人が ワクチン接種後 重篤副反応報告は 1167人かぁ・・・」とありますが、そもそも重症と重篤副反応を同質に取り扱っている点で間違っています。

コロナ(SARS-CoV-2による感染症)における重症とは人工呼吸器やECMOをつける状態にある人を指します。一方で重篤副反応とは同資料[5][6]に定義されているように発熱して入院しただけでもカウントされます。つまり、コロナで例えれば軽症で入院は、ワクチンでいう重篤副反応と同じとなります。全然同質ではありません。

「ワクチン打ってもコロナになる」とありますが、コロナになる、SARS-CoV-2による感染症を発症する確率が0%でないというだけです。程度の問題を考えましょう。

ワクチンの効能には個人差があります。0%はあり得ません。そもそも物事には起こる確率があります。極論を言うと私が月へ突然ワープする確率は量子力学上0%ではありません。そういうことです。

 

「打っても「ましにはならない」」とありますが、感染症に対する「ましになる」の定義がないので、なんとでも言えます。

ましってなんですかね。議論の余地もないかもしれません。

「新しいタイプのワクチンで初めての添加剤が使用されている。」といっても、ワクチン以外の医薬品では使われている添加剤です。

その添加剤(ポリエチレングリコール)はワクチンでは使われていませんが、下剤に使われている添加剤です[7]。

「今後想像できない症状が出る可能性」は、生きていればワクチンを摂取しようが摂取しなくとも、何をしていてもいつどこでも起こりえます。

我々はいつ死ぬかわかりません。突発的な心臓発作で死ぬかもしれませんし、交通事故に巻き込まれることもあるでしょう。SARS-CoV-2による感染症で死ぬこともあるでしょう。その可能性を我々は全て棚に置いて生きています。

 

末筆ですが、本ブログそのものが私個人の意見であり、所属機関は特に関係ありません。(所属機関が関係する場合は所属機関のブログに書きます。)

 

出典

[1] https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html

[2] https://graphics.reuters.com/world-coronavirus-tracker-and-maps/ja/countries-and-territories/brazil/

[3] https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/brazil/data.html#section1

[4] https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/human-papillomavirus-(hpv)-and-cervical-cancer

[5] https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000816269.pdf

[6] https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000816315.pdf

[7] https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0004.html