なにメモ

コンピュータビジョンや機械学習関係の話題を書き綴ると思うブログです。

課題とは何か

課題とは何か。

端的に言えば、「問題」(question)、「問題となること」(problem)、または「やらなきゃいけないこと」(mission, task, work)です。

しかし、誰が誰へいつまでに何のために「やらなきゃいけないこと」なんでしょうか。

実はビジネスなどのシーンで変わってきます。

そこで本記事ではビジネスや研究、行政でのシーンで「やらなきゃいけないこと」にフォーカスを当て、課題の意味を解説していきます。

 

 

ビジネスにおける課題

ビジネスにおける課題とは、上司から与えられた目標の中で自分が企画した自分で「やらなきゃいけないこと」です。

 

自分から自分へというのは何かおかしいものを感じますが、もともとは上司が部下に出す「やらなきゃいけないこと」、つまり業務命令(mission, task)だったからだと推察されます。

時代は高度経済成長期にもどります。

この頃の日本企業の目標は「欧米列強に並ぶこと」でした。

そのための手っ取り早い課題は「欧米列強を真似ること」でした。

たとえば、某自動車会社のエンジンはもともと海外企業のエンジンをリバース・エンジニアリング[1]して日本で生産できるようにしました。(○クリとかいっちゃだめだよ!)

しかし、バブル期をすぎるともはや欧米に並んでしまったため、わかりやすい目標を経営層が立てにくくなりました。

加えて技術の進歩が劇的に早まったため、経営層が想定する10年後ぐらいの目標も予測不能になりました(c.f. 収穫加速の法則)。

この背景から目標が誰にもたてられないため、経営層が課題を立てにくくなりました。

実際に某自動車会社のエンジンはもはや最先端なわけで、もうエンジンでなく、モーターで走らせようといますよね。

代わりに経営層はもっとフットワークの軽く短期間を予測する必要がある部下に課題を立てるように依頼しているように思えます。

しかし、ここで問題となるのは、どっちにしろ目標がないので、部下が課題がたてようがないのです。しかも部下によっては課題のたて方*1をわかっていません。

そして末端の社員にたどり着く頃にはなんだかよくわからない状態になったなにかがきて、なんだこれはとなってしまうわけです。

なやみものですね。

 

研究における課題

実は研究において「課題」という曖昧な概念は必要ありません。

なぜならば仮説検証型のアプローチ*2にも、近年出てきたデータドリブン型のアプローチにもそんなものは出てこないためです。

日本において、研究における課題には実は3つの意味があります。

 

1.研究課題(Research Question)

2.今後の課題、今後やらなきゃいけないこと(future work)

3.研究計画を立てたときに計画を実行する際にやらなきゃいけないこと(task)

 

英訳を見ればわかりますが、シーンによってぜんぜん意味が異なります。

特に3についてはPIが頑張って計画を立てて科研費を取ってくるときに必要です。あるいは、文系の修士課程や理系の博士課程に進学する際に必要になってくるでしょう。大半の人には無縁です。講義で教えてくれすらしません。(教えろよマジで)

しかも、工学と科学で課題の意味が微妙に異なるので、これはまた別に記事にします。 

 

行政における課題

行政における課題は、公務員が国民へ国民の福祉のために「やらなきゃいけないこと」になります。

たちが悪いことに、公務員は課題の意味を問題の意味と使い分けず説明することが多いのです。

これは自分の仮説なのですが、天下り公共事業科研費などを通じてビジネスやアカデミアに日本の行政における課題の意味が広まってしまい、ビジネスやアカデミアで混乱が起きてしまったのではないかと考えています。

 

まとめ

課題とは「やらなきゃいけないこと」です。

その課題は本当に「やらなきゃいけないこと」ですか?

そういう観点から課題を検証することも重要だと思います。

 

 脚注

*1: 

ちなみに課題は目標と現状の差分、つまり問題の中で解決すべき優先順位の高い問題を解くために「やらなきゃいけないこと」だと(僕は)考えています。

*2:

科学における仮説検証型のアプローチ

観察をしていく中で生まれた、いまだ説明されていない疑問(question)を説明する仮説を立て、その仮説が疑問をうまく説明できているかどうか検証するアプローチ[2]

工学における仮説検証型のアプローチ

目的(goal)と現状の差分、つまり既存研究の中で解決されていない問題(problem)があって、問題を解決するための提案手法(proposed method)を立て、その提案手法が有効かどうか検証するアプローチ

 

 

参考文献

[1] トヨタ企業サイト|トヨタ自動車75年史|第1部 第2章 第2節|第3項 A型エンジンとA1型乗用車の試作

[2] https://en.wikipedia.org/wiki/Scientific_method